「お前たち…なんということを」
「ひとが善意で助けてやろうと差し伸べた手を…恩知らずどもが。今すぐ蹴散らしてやってもいいんだぞ」
だめだよ師匠。そんなこと…
「杏子、しっかりして。ああごめんなさい─私がこんな、こんなことを頼んだせいで」
泣かないでと言いたいのに唇すら動かない。
「くそ、面倒なことをしてくれた。こいつは常人より少し丈夫だが毒気が抜けるまで暫く動けんぞ。見ろ、お前たちの勝手な行いで主をも苦しめる」
強く拳を握った。かろうじて意識は残っていた。私がやるしかないんだ。…動け、動いてよ。
「─動けえっ」
体が跳ねた。冷や汗がとまらなかったが、もうこれしか方法はない。
「お前、何を馬鹿な真似を。やめておけ、言霊で繋いだ意識など…死ぬぞ」