【翡翠side】
「おい。眠らないと身体に障るぞ」
「ふふ、大丈夫。貴方こそ眠ったら?」
「軟弱なお前と一緒にするな」
「意地っ張り」
春の月は、凄く綺麗だ。大好きな季節。愛しい春。
昨年までは─泉のほとりで。
月が煌く夜に、皆で舞い、歌い、天に雨を乞うていたのに。人からすれば、いらない行いだったのかしら。
喉の痛みは日々増すだけ。
こうしている間にも、ちりちりと私の身体を呪いは蝕んだ。
「彼女とは付き合いは長いの?」
安心しきった、無防備な寝顔の杏子を見つめた。疲れてしまったのね、私のせいで。