「だから、お願い杏子。私に」
彼女の真白い手を、強く握る。
「…私は巫女で、術師じゃないです。だから痛みを忘れる暗示をかけるのはできません。でも絶対、貴女の呪いは私が解いて見せます」
何か策があるはずだ。あるものすべてを引っ張って探すんだ。
口をついて出た無責任な言葉だったかもしれない。けれど、姫は嬉しそうに笑った。
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文献や巻物、ミミズの這ったような文字と格闘しているとすっかり夜が更けた。もう寝た方がいい、と師匠と姫にも言われしぶしぶ床に就く。
「おやすみなさい。…翡翠様は眠らないの?」
「ええ。なんだか月を眺めていたい気分なの」
「そう?でも、心配だから休んでね。…じゃ、おやすみ」
重い瞼を閉じれば、あっという間に深い闇へと意識は沈んだ。