そして、詳しい事情を聴くべく暫くの間、我が家へ姫様が住まうことになった。泉から離れても大丈夫なのかと聞くと人の姿でいれば水辺じゃなくとも大丈夫らしい。
「狭いけど遠慮せず、ゆっくりしていってください」
「ふふ、杏子は優しいのね。人の子の家にあがるなんて、初めてだわ」
無邪気に笑った。彼女は楽しそうに部屋中を歩き回っていた。
「翡翠さまは毎年あの場所で歌を?」
「えぇ。……私にはそれしか出来ないから」
寂しそうな声だった。言葉に詰まる。
「─あと3日だ」
師匠の凛とした声に嫌な予感がする。
「どういうこと?師匠」
「あと3日のうち、雨乞いの儀をしなければ泉の水は枯れる」