「淡き命(みこと)が形代(かたしろ)、天津風(あまつかぜ)にて放たれよ!」



あらゆるものを散らす、哀しい炎じゃなくて。本当は誰かを守りたかった、優しいともしび。誰よりあなたは救われたかった。守りたい命があったんだ。



けれどそれは─かなわなかった。



寂しさ、悲しさは時として心を歪ませる。人を助けたいという思いはやがて、穢れ人への憎しみへと変化した。


誰かに心の叫びに気づいてほしくて、繰り返し人を襲った。




文言を唱えた後、妖の体は淡い光に包まれる。誰もが息をひそめ経過を見守っていた。