若い衆は看板を立て、完全に池を封鎖するようだった。人の手が入る前に…ここを離れなければいけないか。


「あの爺さんちももう終わりだな。娘と婆じゃ生計も立てられんだろうに」


「娘は売ればいいじゃねえか。多少は金になるべえよ。稼ぎにならん婆は適当に理由をつけて村から追い出しゃいい。飯食うだけの人間は、村に置いておけん」


「それもそうだなあ」


「あの爺さんから病がうつってたら敵わん」



「そうしようそうしよう」口々に言った衆は足早に池から立ち去った。


ことが起きたのは明くる日の夜だった。憔悴した老婆が、縛られた状態で池の前に棄てられていた。


「…おい、しっかりしろ!」



翁のつがいだろうか。聞こえないとはわかっていても声をかけられずにはいなかった。


「あ…ぁ…」


私の姿は見えていないようだったが、老婆は震えながら呟いた。



「娘を…娘をどうか助けてやってくださいまし…」