師匠にそう言い残し、私は台所で手を洗いに行った。


「なかなか落ちないなぁ・・・」



石鹸をつけて擦っても、なかなか落ちてくれない。駄目だ、これ流しが汚れちゃう。

仕方ない、外で洗おう。庭の水やりようのホースを外して、蛇口をひねる。小学生のときもよく、毎回授業終わりにみんなでトイレで行列作って手洗ったっけ…なんだかなつかしくなって、くすりと笑う。




「─杏子殿とお見受けする」



「えー?何師匠・・・って、うわあっ─」


ふりむけば、犬のような顔と、人間と犬が混ざったような手足。


強い力で首をつかまれ、息を吸うことができない。


「う・・・ッ、痛っ」


!そうだ言霊!!

「放せ!!!!!」


目をきつく閉じ、強く言い放った。