「じゃあ、オレにするか?」



蜂蜜色の髪が、音を立てて揺れた。


一瞬だけ。



動くことと、息を忘れた。

身体の奥から力がふっと抜かれた気がした。


「なーんて、冗談じょうだ…え、何赤くなってんの?」


「っば、馬鹿なんですか…」


生徒をからかわないでください!ぷぷっと先生は吹き出した。なんて人だ!免疫ゼロの女子高生に!



「おかげで涙も悩みも引っ込みました!心配してくれてありがとうございました。もう落ち着いたんで教室帰りますっ」


「ははは、そんなぷりぷりすんなって!あ。恋の悩みはいつでも聞くぞ~」


「っ、べーべー!ジュース、ご馳走様でした!」


舌を出して、私はわざと大きく音を立てて理科室の扉を閉じた。