「真実なんだ。事実だ。実際に起きた、この町の歴史の始まりなんだよ」

「だ…って、わかってるよ、わかってる。でも…いきなりこんなこと言われても、信じるほうが無理だよ」


─結局はどっちもどっちじゃないか。

仲違いをして、勝手に嫉妬して、化けて、町をひっくり返すような戦いをして、それで神様になれるんなら安いものじゃないか。



恐ろしかった。

認めたくなかった。

私にはその"一部"が宿っているの?


だとしたら薫も然りなのか。


振りかざした正義が、四方八方どの方角から見ても正義とは限らない。

麻上、平坂からすれば私たちは極悪人だ。



「ねえ、神崎くん。私は、なんなのかな?」


つとめて明るく笑ったのにも関わらず声は震えた。


それに被せる響きのいい声は、いつもより少しだけ揺らいでいた。


「─君の体は、たぶん…」


『あやかしにも神にも似て非なる。それでいて、人でもない存在なんだ。』


人、妖、どこにも属さない、誰にも付き従わない神の風格。
生まれながらに私はそれをどうやら宿しているようで。


正常な生命の営みの輪から外れた、ごくわずかな─唯一の『絶対悪』に対抗できる存在。



「それこそが、君の修羅の血の本質」



あぁ。


「薫に…薫に会いたい」
 

「!」