すると、静かに風が吹いた。 「良い風だ…」 蒸し暑い夜には心地好く感じる風だ。 ふと、ある言葉が頭によぎった。 「夏に吹く涼風のように自由に――、か…」 「はっ?」 「私の名前の由来です」 私の『涼』という名前は『涼風』から取ったらしい。 子供の頃に聞いた話だから、あまり覚えてないけど、その部分だけは覚えていた。