あれ?
どうしてそんなに悲しげな顔をするの?
なんか、前にもお母さんのこんな顔見たことある気がする。
…怖い、怖いよ。
またお母さんに嫌われる。。。
なにも覚えてないのに、こんな感情が頭をよぎった。
「先生に言ってくるわ…ちょっと待っててね」
お母さんは少し無理をしたような笑顔を見せて、病室から出ていった。
私、何があったんだろう…
これからの不安と孤独感だけが、頭の中を埋めつくしていた。
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その翌日、検査結果が出たとお母さんから聞いた。
それは予想もしていなかった、驚くものだった。
「千歩、落ち着いて聞いてね」
お母さんは真剣な表情で、私の両手を優しく握って話し出した。
「貴方は2年前、事故にあったの。交通事故だったんだけどね。高校1年生だった千歩が、自転車で横断歩道を渡ってた時、スピードを出した普通車が突っ込んできて……跳ねられたの。完全に相手の不注意だったわ」
衝撃的だった。
私、交通事故にあったんだ。
だけど、それより2年前って…?
お母さんは少し間をおいてから、続きを話し出した。
「それで千歩は意識不明の重体になってね。一命は取り留めたんだけど、脳死…つまり植物状態になってしまったの。先生には、意識が戻る可能性はほとんどないって言われたわ」
あぁ、だから。
看護師さんもお医者さんも、あんなに驚いてたんだ。
私……2年間も眠り続けてたんだね。
「だけど、千歩は目覚めた。本当に嬉しかったんだから。諦めないでよかったって心の底から思ったわ」
そういってお母さんはまた涙を零した。
お母さん……頑張ってくれたんだね。
だって2年間も人形みたいな人間を看病するなんて、普通は出来ないもんね。
お金だって、いっぱいかかるだろうし。