私は訳が分からないまま、検査に応じるだけだった。
検査も終わり、落ち着いてきたころ泣きじゃくっていた女の人が病室に入ってきた。
「千歩、大丈夫??」
うん、、、大丈夫。
あなたは誰?
私は一体何があったの??
聞きたいことは山ほどあるのに、声がかすれて喋れない。
それに気づいた女の人は、優しく微笑んで私の頭を優しく撫でた。
「慌てなくていいのよ。貴方が目を覚ましてくれただけで十分なんだから」
なぜか、とても安心できた。
ようやく体温が戻ったような。
自分に戻れたような。
不思議な感じがした。
それに、何の根拠もないけど……
「…お、かぁ…さ…ん?」
私は出ない声を一生懸命に絞りだして、そう聞いた。
「…え?そうよ、お母さんよ?どうしたの??」
お母さん…なんだ。
やっぱり。
私の、お母さん……。
それが分かった途端、身体中の力が抜けたように涙がボロボロとこぼれ落ちた。
「千歩?どうしたの?お母さんはここにいるから。千歩のそばにいるわ。安心して」
少し困ったように笑いながら、私をきつく抱きしめてくれた。
「お、かぁ…さん、なんだ、ね……私は、だぁれ?」
そういうと、お母さんは静かに体を起こして私を見た。
まさか、とでも言いたげな、そんな表情で。
「千歩…貴方、記憶がないの?」
私はただ頷いた。
「う、そ……」
お母さんは愕然とした表情で、黙りこんでしまった。