「今は入居者はいないみたいですが…」

「はい、今は誰もいません。世界大戦時代は人でごった返していたようですが、今の平和な時代には不必要なものですね。最後にここを使ったのは…今年からちょうど20年前に赤ん坊が一人預けられたくらいです。その子も預けられてすぐ里親が見つかりましたが。」

間違いない、私の事だ。

「粉踏さんと言われましたね。確かその時の赤ん坊も粉踏さん夫婦が里親になっていたはず…。」

「はい、間違いないようです。その時赤ん坊だった子供です。」

「やはり、どこかで聞いた名前だと思っていましたよ。」

そう言って晃二さんは懐かしむように私をみていた。

「ここに来た時はまだ赤ん坊だったのに、立派に成長しましたね。」

晃二さんはにこやかな表情でそう私に言った。

「その事で、ちょっとお話があるんですが…良いですか?」

「良いですよ。赤ん坊の時期の事は知らないと思いますし。どのような質問で?」

そう言って、またにこやかな表情をする晃二さんに私は直球で質問をぶつけた。