「どうしたの、歩美？」

「えっ？」

瑞穂が私の妙な雰囲気に呟くように聞いてきた。

「誰から？まさかストーカー！？」

「それはない。」

私がそう断言すると同時に、プツッと電話が愛想つかしたかのように沈黙する。

「電話出なくて良かったの？」

「いや、電話しなきゃ…」

そう言って私は着信履歴の一番上の欄でコールを再開した。

手が耳元で微妙に震える。

電話はすぐに出た。

「あ、もしもし歩美？」

母さんの声が電話ごしに聞こえる。

何も知らずにかけてくる電話にはいつもの調子の母さんの声がした。

私はこんなにも震えているのに…

「ど、どうしたの？」

「えーっと、今日お母さんね、仕事で残業が決まっちゃってね。」

「えっ！？」

私はその言葉に驚き、そして少しホッとしていた。

残業が決まってしまうと帰ってくるのは９時や１０時になってしまう事が多い。

最近はあまりなかったが今日は忙しいようで、仕方なくと言った感じだ。

「ご飯、もう作っちゃってると思うけど、保存できるなら保存しておいてね、帰ってきたら私も食べるから。」

「うん…」

そう言って、その後の私はただ受け答えするだけだった。