そんなわけで、私たちは今階段を上っていた。

此処にはエレベーターが一つだけあるけど、荷物用だから鍵がないと開かないんだとか。

だから部員は全員階段で移動するらしい。


最上階の5階につくころには私は息切れをしていた。

風雅先輩はそんな私に構うことなく普通の顔をしている。

5階には部屋が一つしかなかった。


「基本的に、教室はパートごとに使い分けてる。

 …ただまぁ、こういう日は5階で弾いてるんだよねー……アイツ。」


当然のことだけど、私は「アイツ」を知らないから、風雅先輩の呟きにまともに答えることはできなかった。

ただ曖昧に頷くと、風雅先輩は部屋の扉をノックもせずにあける。