お兄ちゃんの名前を出したとたんに彼は目を丸くした。


「飯島先輩?君、飯島先輩の妹なの?」

「……そうですけど。」


驚かれると何となくしゃくに障る。

口を尖らせて頷くと、彼は顎に指を絡ませながら何度かうなずいた。


「いや、そーだったのか…飯島先輩、元気?」

「はい、お陰様で。」


淡々と答えると、彼は肩をすくめて苦笑した。


「そんなに怒らなくても良いじゃない。

 君…あぁそだ、君の名前聞いてなかったね。」


ボードの直ぐ隣にあるドアに手をかけて私を振り向く。


「…椿。飯島椿です。」

「椿ちゃんか。よろしくね。俺は風雅(ふうが)」

「こちらこそ」


会釈程度に頭を下げると、彼―風雅先輩はドアを開いて中に入る。

私も続いて中に入った。