「いいよ、いいよ。行っておいで。

 何たって葵さんの頼みごとなんだから」


私はこれを葵効果と呼んでいる。

モモは中等部時代からのお兄ちゃんの大ファン。

お兄ちゃんの名前を出せば、大抵の場合乗り切れるんだよね。


「ありがとう!んじゃ行ってくるね。」


お兄ちゃんに手早く『了解!』と返信して、私は弦楽部の部室へと走った。



うちの学校は同じ敷地内にはあるが、中等部と高等部で校舎が別だ。

正門から向かって左側中等部、右が高等部という風に向かい合うように校舎がある。

真ん中には大講堂と呼ばれる中等部・高等部の生徒全員が入る広い講堂がある。

文化祭の時なんかは此処で発表会がある。

兎に角土地が広いから、何処を何で使うのかとかイマイチわからなかったりもする。