そして、私は走り出す。彼も刀を持って走り出す。











手に持っていた暗器を、彼に触れる直前











下に落とした









「!?な、**!?」








彼は止まれず、切れ味のいい刀は私の体を貫く。そして私は暗器のない手で彼を精一杯受け止め抱き締めた












「…ッ、か…はッ…」










腹からはどくどくと血が流れる。










空に見える大きな月よ。どうか、今日くらいは彼に愛を伝えるのを許しておくれ












「な、んで…ッ何故俺を殺さなかった!!!」

「は…ッ、は…ッ…へへ、ごめ…ね」

「…ッな、んで…ッなんでだ!!!」










体を離し、顔を見合わせる。











「私、たくさん、色々偽りを重ねて、き、た…ヒュー…ッ」

「…ッあぁ」

「でもね、貴方を…貴方を、好きな気持ち…に、偽りは、なかったよ」











そう笑うと、私の顔を見ていた彼は、私の顔にボタボタと涙を流した。





嘘をたくさん吐いてきた。嘘つきとたくさん言われた私の、唯一の真実です











「ごめんね、嘘つきで」

「嘘、なんかじゃ…」

「…ありがと、も…つか…た」

「待って、待ってくれ!!俺も、お前が!!」

「さよな、ら」











握っていた手は力を失い、顔は微笑みを浮かべて呼吸を終える























―愛しき人の、腕の中で―









(私は全てを終わらした)












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