夜だと言うのに開いている教会。赤くひいてあるバージンロードを歩けば、不思議と鼓動は上がっていく。
神父が誓いを読み上げる台の前まで上がると、彼はこちらを見て微笑んだ。
「先輩」
『ん?』
「僕、先輩に追い付いたつもりです」
『…』
「背や、会社での地位や学力。いくらか追い付いたつもりでした。でも…」
握っていた手はまた強くぎゅっと繋がれる。何故か泣きそうになって、私もその手を強く握った。
「でも、先輩は…いつも会う度に、僕より前を歩いてるんです。
並べたはずだった、なのに、会ったときにはまた数歩先へ歩いてる。」
『…うん』
「きっと、追い付くことはない」
無意識に手に力がこもる。私がもし、彼と同じ年だったら…彼にこんな気持ちを与えることはなかったはずだ。
「でも、それでもいいと思ってます」
『え…?』
「それでも僕は、いつまでも**先輩を追い続けるから。
この先ずっと、一生」
ぱっ、と前を向いていた顔を横に向けると彼はとても優しく微笑んでいた。
「…**」
先輩が外れた名前を呼ぶ。無意識に目から涙がこぼれ落ちると、彼はそれを拭う。
「僕と、結婚してください」
ひどく優しい声色。目からはボロボロと涙がこぼれ、私は精一杯笑う。
『…はい…ッ』
―並んで歩くにはまだ遠く―
(それでも共に歩んでく)