「運命、宿命、もしくは呪い……か。面白い事を言うな、芳情院さんは」


芳情院の去った図書室で、狩谷はクスリと笑った。



「またロクデモナイ事考えてるんですか?やめてくれないかな、アナタにとっては感情を持たない患者のひとりでも、オレと……芳情院さんにとっては、かけがえのない女性だ」


カタン、と、シンプルだが質の良い白木の椅子をひいて、和音はストンと腰をかけた。


……何故だか、酷く疲れていた。睡眠不足とか体力疲労だけではなく、精神的に。




図書室にいたのは、芳情院と和音の二人ではなく、狩谷もいれた三人だった。




『今後』の事を、話し合っていた。


友梨の事だけでなく、それぞれの。


友梨がこうなってから7ヶ月。


和音は大学院の授業と仕事が飽和状態になってきていたし、芳情院も家業をいつまでも母と他人に任せておく訳にはいかなくなっていた。


本人達はそれでよくても、周りがそれを許さなかった。


どれだけ自分達が、友梨中心の生活を望んでいたとしても、他人や身内との交流を一切断ち切らない限り、友梨だけを見つめて一日を過ごすという訳にはいかないのだ。