「何?」


「落とし物」


あたしの化粧ポーチを差し出して、蓮は右目を閉じてウインクする。



「ありがとう、神谷くん」


「じゃあ、また月曜に」


「じゃあね」



あたし達は普通のクラスメイトのように、軽く手を振って別れた。



なんか…秘密の恋人みたい。



興奮と恥ずかしさの混ざった感情が顔に出ないように、必死で堪えた。



「さすが神谷くんだねぇ」


「なっ、何が…?」


「あんなにウインクが似合う男は他にいないよ」


「そうだね…」



よかったぁ。


陽子も怪しんでいる様子は特にない。