おつかいの中身は牛肉と白滝と焼き豆腐だった。
その近くの八百屋さんでネギをタダで貰い、家に向かう。
登り坂がキツかった。

「持つよ」

「えっ、あ、ありがと!」


隣で歩く遥に荷物を渡し、あたしは重たい足をゆっくり持ち上げた。
遥は着流しのくせして普通に歩いている。
悔しかった。

「…ずるいよ、遥は」

「何が?」

「だって、だって…疲れてないじゃん!!」

「あはは」

「笑い事じゃないよ!」

ゼーハーするあたしとは真逆に、遥は息も上がらずより爽やかにな表情で愉しそうにあたしを見ていた。
ちょっと、恥ずかしかった。
遥は平気なのに疲れてしまうあたしは運動能力の低下か?と思うと自分が恥ずかしくなる。

すると遥はニヤリと笑った。

「遅いね、歩くの」

「う、うるさいっ」

「あまり遅いと服脱がしちゃいますよ―」

「は、はいぃ!?」

何を言っているんだと思いつつ苦笑いしながらスピードを変えずゆっくり歩いていた、ら。

「!?」

遥があたしの白いブラウスの裾をくいっと掴み、軽く引っ張った。

「…しょ、正気ですか?」

「うん♪」


……変態、なのか?
あたしは焦り、今にも服を脱がしかねない遥から逃れる為にあたしはダッシュで坂を駆け上がった。

「おぉ、こりゃ素晴らしい」

「まぁね!やれば出来るから!」

あたしは自慢気に言うが隣には……満面の笑みをした遥。
その素早さにあたしは驚きを隠せない。

「なっ、なんで!?」

「なんでだろーねー」と笑って見せる遥。
あたしは負けじとその速度を上げる。
だがついてくる遥。
ちっとも自分が速いなんて感じられない。

このままだと…このままだと。


「服を脱がされちゃうよーー!!!」


「あはは」


また遥はあたしをからかい、大輪の花が開花したように笑うのだ。

あたしがその度に心を揺るがされているなど知らないで。