「ん…、あれ…?」
あたしは重たい瞼を持ち上げながら畳に寝ていた身体を起す。
目を擦りながら辺りを見回す。
「…さっきの夢は、何…?」
高鳴る鼓動と目元にある微かな涙にあたしは不安を覚えた。
外は闇へと色を変え、星は鮮やかに煌めく。
少し開いた障子の間から入り込む涼しげな夜風。
あたしは寝ていたんだと気が付き、ソッと立ち上がった。
「…あ…」
お布団に翔太くんの姿はなかった。
きっとあたしより先に起きたのだろう。
あたしは翔太くんの部屋を出て縁側をぶらぶら歩いていった。
冷や冷やと伝わる縁側の温度。
足元を月明かりが照らしながらあたしはある部屋の前に辿り着いた。
それは。
「…美月ちゃんかな?」
「はい…」
「入っておいで」
「失礼します…」
達大さんの部屋だ。
優しいその声に導かれ、あたしは達大さんの部屋に入り、正座をした。
「…何をしているんですか?」
「ん?これはねー……」
「御守りを作っているんだよ」と達大さんは笑顔で答え、それをあたしの目の前で揺さぶり見せた。
まだ作りかけの御守り。
淡い桜色の巾着のようだ。
誰にあげるのかはわからないが可愛い作りだった。
「ところで美月ちゃんは何か僕に用があったのかな?」
「…えっとー…」
何かを伝えなきゃいけないのかもしれないけど上手く言えない。
何をどう伝えたいのかわからない。
達大さんは手を止めてあたしの目をじっと見た。
「…美月ちゃん、自分に嘘はつかない方がいいよ」
「嘘?」
「そう」
嘘…?
そんなのついていないはずだけど…。
「あ、そういえば翔太くんの熱大丈夫だったんですか!?」
あたしは身を乗り出して達大さんに問い掛けた。
達大さんは微笑みまた手を動かしながら口を開いた。
「問題ないよ。知恵熱、かな?きっと。もう時期治るよ」
「良かった…」
あたしは少し安堵すると、ある人を思い浮かべた。
もう少しでまた会いに行ける。
ただこう思ったのだ。