夢は意地悪だ。

あたしの最悪な過去をも蘇らせ、今確かに過ぎ行く幸せな時を黒く塗り潰して行く。

そして、また。

記憶上に無い、新たな物語。



「…どうして…どうして…」

一人の少女が涙を流しながら必死に言葉を紡ぐ。

決して長くもない髪を靡かせ、風を身に纏う。

季節は、春。

綺麗に咲き誇る桜花。
揺らぎざわめく木々。



場所は、私のよく知る大好きな場所。


私の唯一の存在できる空間。



水城神社。




なぜだろう。
なぜだかわからない。


この少女と桜と神社を見ていると涙が自然と溢れた。


何か熱いものが込み上げて苦しくなった。