外から聞こえる鈴虫の音。
空に煌めく数々の星と月。
月は雲を省き闇夜を照らす。
そして、見下ろすのだ。
私たちを。

静まり返る、今宵。
夢を見る二人を背に、あたしは空を眺める。
そしてふと、思うのだ。

“ずっと”とは、いつまでを意味しているのだろうか。
何も躊躇せず、有りのままでいる事なのだろうか。
それとも、何かを探すためにさ迷い続ける事なのだろうか。

あたしはこう考える。

その場限りの言い草に過ぎないのだ、と。


「…ずっと……」

口にするのは簡単なのに。
実践するのは難しい。

あたしは何を“ずっと”探しているのか。
何を“ずっと”守り続けたいのか。








あたしは何も探せない、守れない。
だからこそ、求めてた。

“ずっと”という約束の言葉を。


ずっと、守って欲しかった。
ずっと、傍にいて欲しかった。


ずっと、離さないで欲しかった。


なのに。



「……っ…」


みんな、離れていった。




頬から流れる一粒の雫を、そっと風が拭う。
月がそっと、雲に身を隠す。
雲は容赦無く月を隠し、勝ち誇ったようにまた、雲を増してく。
風が煽る。
涼しげなせせらぎの音が鼓膜を揺さぶるのだ。


―――私は思う。


いつまでこの真っ黒い心と深い傷痕と共に過ごさなきゃならないのだろうか、と。

いつになったらこの心は癒えるのだろうか、と。


苦しみを抱え込み、何度この繰り返しの世を生きていけば良いのだろう。
もう慣れた、なんて言ったらかなりの嘘になる。
こんなの、慣れる訳がないんだ。


だけど。
ここ最近、だろうか。
あたしの心の傷痕が修復していっているのだ。

その原因はただ一つ。
あたしの心の支えになっている―――遥という、青年だ。

初めて逢った時から、不思議に懐かしく思ってしまうし、それに、あたしが欲しいモノをたくさんくれる。

例えば、“優しさ”とか“信頼”とか―――“愛情”とか…。

遥があたしを変えてくれた。
遥があたしに勇気をくれた。
遥があたしを受け入れてくれた。


それだけが、とてつもなく嬉しくて堪らなかった。

だからあたしは遥に好意を持ったんだ。
いや、遥があたしに好意を持たせてくれたんだ。

この気持ちは、決して間違ってなんかない。
むしろ、正しいのかもしれない。


だからあたしは、遥を好きになったことに“後悔”なんて言葉は必要ないんだ。