「「こんにちわー♪」」

甲高い声が外から聞こえてきた。
あたしは現実逃避をするように両の耳を塞いだ。

何も聞こえない。
あたしは音の無い世界の人間だ!

などと、呪文を唱えていた。

現在、お昼過ぎ。
さすがに太陽が鬱陶しくなってきた頃だ。
あたしは部屋の目の前の縁側に腰を下ろしていた。
最近はここに座る事が多くなっている。
なぜなら、屋根があるから。

あたしが現実逃避をしていると、ペタペタと足音が聞こえてきた。

「お友達、来たみたいよ」

「認めたくない!!」

翔太くんだった。
翔太くんは、駄々こねるあたしに溜め息を吐き、面倒くさそうに言う。

「おい美月」

「…翔太くんが…迎えてあげればいいじゃん…」

「………は?」

今何かが切れる音がした。
あたしはハッとして翔太くんを見るが、もう手遅れで。

バサッ、と。

あたしの身体は宙に浮いていた。

「うわっ!ちょ…翔太くん!?」

あたしは翔太くんの顔を見上げる。
今、あたしは、翔太くんにお姫様抱っこをされているのだ。

「ジタバタしないの」

そのまま歩き出す、翔太くん。
逃がすまい、と翔太くんはがっちりあたしを抱く。
口元には怪しげな笑み。

何を企んで…。

「!」

翔太くんはこのまま花恋達を出迎えようとしているのだ。
あたしは「ぎゃーっ!!」と叫ぶが翔太くんはただ笑うだけ。

そしてそのまま、出迎えてしまった。

「みっ美月!?」

美波が目を丸くし、見てくる。
あたしは何も抗う術もなく、内心泣いていた。

そして翔太くんは…。

「いらっしゃい」

超キラキラ王子様スマイルで花恋と美波を出迎えた。
“猫被ってる”って、こんな時使えるんだ、と思ってしまう。

当然の事、二人は翔太くんに見とれてしまう。
「彼氏いるだろっ!」と、突っ込みたくなるが、我慢した。

それから二人は中に入り、座ったと思ったらずっと翔太くんにインタビューしていた。


翔太くんも憂鬱だな、なんて思い苦笑した。