あたしは辺りを見渡した。
そして机にある携帯をじっと睨む。
本当に花恋と美波は来る。
あたしはその嬉しさと、そっちに行けないあたしに合わせてくれた罪悪感が生まれた。
それに、今さっきのニュースの事もあって正直危ないと思う。
だけど…。
「会うわけ無い…よね」
そうだ、会うわけ無い。
会ってしまったら、とんだ災難だけど。
確率は少ない。
ま、会わないけど。
あははと苦笑いをしていると、突然携帯が震えだした。
携帯を取り、画面を見てみた、ら。
《美波》
その文字に戸惑いながらも、通話ボタンを押し、耳に当てた。
「…もしも――」
『もっしもーし!!』
あたしが言う前に凄まじいぐらいの声が鼓膜を叩く。
キーンと鳴る耳を直しながら、ソッとまた耳に携帯を当てる。
「…あの、来るって本当?」
『うん。迷惑…かな?』
さっきの威勢とはまるで別人みたいにしおらしく言った。
迷惑。
そんな事はない。
むしろ、こんなの大歓迎。
花恋と美波の事だから、迷惑なんてそんなのない。
「…待ってる」
『え?』
「だから、待ってるから。…気を付けて来るんだよ」
これがあたしの本音だった。
あの人達の事だから電車とかの間違いは無いと思うけど。
活発過ぎて事故とかにあったりしないか不安になる。
『…うん。…ありがと、じゃあね。婚約者さんに宜しく』
「…うん!」
そう言うとお互い電話を切った。
何も音がしなくなった。
シンっと静まり返った部屋を一望する。
部屋にはあたし一人。
物音一つしない。
庭には向日葵が咲こうとしている。
太陽の光を浴びて。
あたしはその場に立ち携帯を手に、ポツリと呟いた。
「…水城神社に行こう……」
裸足の足でペタペタ歩き、玄関でサンダルを履く。
そして玄関の扉を開き、太陽の下へと入っていった。