駄目だ駄目だ。
正気に戻れ、あたし。
駄目だ、と呪文のように、頭の中で自分に言い聞かせる。
そしてあたしは目を細め、心を落ち着かす。
すると、ふと、達大さんの言葉が頭を過る。
『……美月ちゃんは、自分に正直な、恋をしなさい』
「正直な…恋」
あたしにとって正直な恋ってなんだろう。
自分に正直って…一体…。
その時、枕元にある携帯がぶるぶる震えた。
あまり来ないメールに戸惑いながらも、携帯を手に取り、画面を見てみる。
《受信メール一件》
そう表示されていて、あたしはメールを開いてみた。
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7/22 9:37
from 花恋
Sub お久しぶり!
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元気してる?
どうよ、例の婚約者さんはっ!
どうせ超イケメンなんでしょー
羨ましー☆
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「…」
君は一体何を言いたいんだい?
嫌味!?
あたしに嫌味を言いたいんですか!!
あたしは溜め息を吐き、花恋に返信を返す。
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from 美月
sub RE:お久しぶり!
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普通にカッコいいよ。
で、何?
いきなりメールとか珍しいじゃん。
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これだけ打って、返信した。
送信してそんな時間が経たないころ、また、花恋からメールがあった。
あたしはその速さに感心しながらも受信メールを開いた。
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7/22 9:42
from 花恋
sub RE2:お久しぶり!
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まあまあ、そんな怒んないでよー☆
じゃ、要件なんだけど…
明後日から私達夏休みだから、美波と二人でそっちに行くから♪
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…………はい?
あたしは返信を返さずに直ぐ様花恋に電話した。
『――っはい!もしもしー』
「もしもしじゃないわよっ!!」
『あー、怒ったー』
「当然!」
『…ごめん』
呑気な花恋に対して、怒りを露にするあたし。
それもそのはず。
だって、いきなり過ぎたから。
だけど…。
「……元気そうで…良かった」
花恋の声、久しぶりかも。
なんか、懐かし過ぎて涙が出そうになる。
やっぱり花恋は花恋で何も変わっていなかった。
それだけにあたしは紛れもない安堵をした。