「ん~~~…」
寝苦しい。
暑くて蹴る布団。
背中や額や身体中からベタベタと嫌な汗が滲む。
パジャマが肌にくっついて、気持ちが悪い。
バサッ。
あたしは勢い良く起き上がる。
暑くて開けた障子。
ちらりと見える庭に、夏希さんが見えた。
庭にお水をまいていたのだろう。
杓を片手にしていた。
「あら?美月ちゃん、おはよう」
「お、おはようございます…」
笑顔で挨拶する夏希さんを見習い、あたしも寝起きの笑顔。
朝っぱらからキツイ、眩しく照りつける日差し。
それに、入道雲がくらっとするぐらい眩しかった。
「…今日も、暑いですね…」
「そうねー、近頃は特にねえ」
7月下旬、だんだん夏本場の季節になるための準備している毎日の気候。
最近では25℃を越えるのが普通なって。
活動するのが面倒になっている。
「じゃ、ご飯作ってくるわね」と、夏希さんは玄関に向かっていった。
軽く返事を返すと、また布団に横になり、天井を見つめた。
『…ずっと…笑顔で』
夢の中の遥は言った。
いや、夢じゃ無かったのかも。
昨日、遥が何か呟いた時があったけど、あたしには聞こえなかったし。
その事が回想されただけなのかもしれない。
しかも。
それを言ってた時の遥の表情ときたら。
何がどうしたのだろう。
そんなにも悲しいことがあったのだろうか。
酷く、あたしを哀れんでいた。
別に同情されることも、したこともないのに。
…いや。
あたしが気が付いていないだけで、遥は……。
「気付いていたのかも…」
直ぐ様、あたしの言葉を思い出してみる。
だが。
「当てはまることなんて…何も……」
気に触ることもないと思ったのに。
同情…同情…同情同情…。
「っ」
あたしはハッとして、目を開いた。
「雅也の…ことかな…」
今まであたしを利用してきた人の事で、あたしを気遣って。
だから「笑顔で」なんて、言ったのだろうか。
「…いや…違うな」
多分表し方が酷いかもしれないけど。
遥はそこまで気を配らない人だろう。
少しの間だけど、分かってきた事を基にすれば。
遥は、マイペースでずっと笑っている。
人のペースに巻き込まれないで必ずしも、自分のペースに持っていく。
そんな人。
まぁ、そんな人だからこそ……。
「って。…あたしなんで遥の事ばっかり考えて…」
気付いた時には、あたしの頬は赤くなっていた。