どうしてだろう。
どうしてだろう。
なんでこんなに、逢いたくなるのだろう。

あの日、遥を一目見たときから、あたしの脳は遥に洗脳されて。

あたしの心が、身体が、遥を求めている。

翔太くんに抱き締められても、やっぱり、遥の言葉の方が温かくて。

遥に抱き締められると、涙が出るほどに、安心する。

「はぁ、はぁ」

息が切れるなんて気にならない。
早く、速く。
遥に逢いたいから。

あの、艶やかな髪も、漆黒の瞳も、日焼けの知らない肌も、綺麗な声も。

その全てに、あたしは―――


「はぁ…はぁ…」


気付けばあたしは石段を登りきり、頂上へと。
そこには真っ赤な鳥居が立てられ、長い参道を桜の木が導くような、御決まりの場所。

“水城神社”。

そして、目の前の舞を踊る場には。

「…遥…」

彼の姿。
最近、見ていなかったから、懐かしく思う。
なぜか、今まで、いや、昔から見ていたかのように。

俯く遥はきっと寝ているに違いない。
艶やかな髪が太陽の光を浴びて、キラキラと光る。

あたしはゆっくり、ゆっくりと、足を進めて行く。
少しずつ遥に近付いていくと、速く打ち付ける、あたしの鼓動。


ドクン、ドクンドクン。



『…美月ちゃん、自分に正直な、恋をしなさい』


ピタッ。
あたしはその場に止まる。

何かがあたしを渦巻く。
何かがあたしを揺るがす。

何かが、あたしを……。

支配して行く。


「美月ちゃん…?」

見つめる先は、遥の瞳。
起きたのか、あたしに気付いた。
だけど、遥の言葉は今のあたしには聞こえない。
あたしは遥の綺麗な瞳に釘付けだから。

「…み、づき…」

「――遥…」

あたしは遥を呼んだ。
そんなあたしに遥は驚いたのか、目を開いてあたしを見つめる。

なんでかな。

翔太くんと違う感情があたしの中をぐるぐる、駆け回る。

遥、に、対しての感情。

遥は、立ち止まるあたしを見つめ、目を細め柔らかく笑った。

「…おいで」


ドクン。

手を差し伸べるようにあたしを招く、遥。
凛々しい遥の声にあたしの胸は高鳴った。


この気持ち、わからなすぎて、もどかしい。