触れた唇が、熱い。

これは世間からすれば“キス”という行為。

翔太くんはあたしを受け入れたのかな?
あたしのこと、好きなのかな?

「…はっ」

離れた唇の隙間に、あたしは息を漏らす。
唇が熱い。
頬が熱い。
それ以上に、目尻が熱い。
少し、涙ぐむ目で翔太くんがぼやける。

「…しょ…た……くん…?」

いつものヘラヘラした翔太くんじゃない。
真剣で、無表情とでもいうぐらい、真面目な顔をしている。

「……もう一回…」

ももももう一回、だとっ!?

そう言うと、翔太くんの顔はまた、近付く。
そしてまた、唇は塞がれる。

なんの罪もないのに、自由を奪われる、あたし。
だけど、抵抗する気力さえ、出てこない。

ここで嫌がったら、嫌われそうだから。

それもあった。
それに、あたしは力を無くし、抵抗する力も湧かないのだ。

唇は離れ、自由を取り戻すあたし。

肩を使い、息をしながら、あたしは翔太くんの方に身体を倒した。
そんなあたしに何も言わずに、優しく、抱き締め、口付けをする。

何度も何度も交わされる短いけど長い、キス。
角度を変えては、その隙間から熱い吐息が漏れる繰り返し。

ふと、気が付けば、あたしの後頭部に翔太くんの手が添えられた。


これはヤバい、と思ったが、もう遅くて。
だけど必死にもがく。
翔太くんの胸板を力の有る限り叩きまくる。

それに気づいたのか、翔太くんの唇はゆっくり離れた。

あたしは翔太くんに寄り掛かりながらも、空気を思いっきり吸う。


そんなあたしの頭に手を添え、優しく撫でる。

「……美月可愛い…」

そう、呟いて、ソッとあたしを抱き締めた。

翔太くんの匂いがする。
だけど、あたしの胸は警告の鐘のように鳴り続けた。

「…どうだった?」

「っ!!??」

翔太くんは意地悪そうに、だけど愉しそうにあたしに問いかけた。
「なんて人だ!なんて奴だ!」と思いつつ、あたしは顔を上げ、翔太くんを見上げる。

と。

翔太くんは妖艶な笑みを浮かべていた。

あたしは一度、ピクリ、と、身体を強張らせるが、直ぐに翔太くんを睨んだ。

「…い…じわる…」

「勿体無き、御言葉」

「褒めてないし!!」なんて、意地を張ってみるが、「いやいや、褒め言葉だよ」と流されてしまう。

翔太くんはあたしの頭をくしゃくしゃになるぐらい、撫でた。