翔太くんを、じっと見る。
何度も、何度も。
同じ呼吸リズムを繰り返す、寝息。
その呼吸で、身体が動く。
それにぐっと、目をそらさないあたし。

ふと。
翔太くんの肩に掛かる掛け布団が、はがれていたのに、あたしは気付いた。
それを見て、無意識に手を伸ばし、布団に触れていた。

冷たくて、だけどじわり、温かい気がして。
何より、少し触れた翔太くんの肩は、翔太くんの温もりを持つ。

「起きるかも」と、そんな不安を胸に抱きながらも、あたしはソッと、肩に合わせてはがれた掛け布団を引っ張る。

と。

「…寝込みを襲うなんて、悪い趣味してるね」

「っ!!」

横を向きながらも、髪と髪の間を巡ってあたしを見る、茶色い瞳。
その瞳は焦るあたしを見逃さない。
布団に触れる手を引き下げようとするが、翔太くんは許さなかった。

「うわっ!!」

「やばい」と、思った時はもう遅くて。
あたしはスポリ、翔太くんの温もりの中へ。

引っ付く翔太くんの身体。
腰に回る手と、首筋に回る手。

完全に、逃げ場を失った愚かな生き物、あたし。
翔太くんの胸に顔を埋めている、状況。
とても、良い状況ではない。
むしろ、やばい状況なのだ。

鼻をくすぐる、男っぽい翔太くんの匂い。
クスクスと聞こえる笑い声は、鼓膜を揺らし、振動を送り、あたしを揺るがす。

「ん…」

ドキドキするしかできない。

どうしよう。
これじゃあ、翔太くんに聞こえちゃうよ。

あたしは翔太くんの胸で、ただじっと。
目を伏せた。

「どうしたの?」

愉しげに言う、翔太くんの顔はきっと、口角を上げ妖艶な笑みを浮かべてるに違いない。
あたしの耳元で聞こえる、翔太くんの呼吸音、吐息、微かな声が、あたしを揺るがす。
「どうしたの」の、質問に答えるように、あたしは顔を赤く染める。
耳まで赤くするあたしは、もう、隠す術もなくて。

「真っ赤だ」

「う、うるさい」

あたしを愉しげにあしらい続ける。