見るべき時にって、遥は言ったよね。
じゃあ今見ても良いってことだろうか。

「……」

アタシは折り畳まれたおみくじを開いていく。
運勢はどうだろう。
大凶かな?
あたしは紙を広げた。

「っ…」

初めは驚いたけど、あたしは微笑んだ。
それと同時にインターホンが鳴り室内に響き渡る。
あたしは立ち上がり紙を持ったまま玄関に向かう。
業者さんかな?
あたしは靴を履き、ドアを開けた。

「はーい…」

「こんにちは」

「っ」

あたしは固まってしまった。
喉が詰まって言葉が出ない。
目の前にいる男の人は口を開いて笑顔で話す。

「隣に引っ越して来たのでよろしくお願いします」

あたしはコクりと頷く。
まさか、と思った。
声も、姿も。
全部。

『美月ちゃん』

彼に、遥にそっくりだから。

目の前の男の人はアタシに包装された箱を渡す。
あたしは慌ててそれに手を添えた。
ふと見た男の人の手に、あたしは涙が出そうになった。

だって。
だって。





あたしがかつてあげた、ブレスレットを左手首にしていたから。






「……っ…」

「どうかしましたか?」

首を左右に振った。
その振動で涙が零れ落ちる。
ポタリと箱の上に跡を残す。

「っ」

身体中から熱が込み上げる。
言葉では表せないほど、あたしは慌てていた。
心臓がものすごい速さで脈を打つ。

そして片手に握っていたピンク色の紙が足元に落ちた。
あたしがハッとして拾う前に彼はしゃがんで拾っていた。

「これ……」

彼はポツリと独り言のように呟いた。
ゆっくり立ち上がりそれをあたしに渡す。

「はい」

「……ありがとう…っ」

そう言うと彼はあたしの涙を白くて長い指で拭った。
その行動にあたしの心はぐらりと揺らいだ。

「…泣かないで?」

「っ」

泣いている理由。
それは貴方なの。
どうして貴方はそんなに、遥に似ているの?

あたしは涙を拭い、頭を下げた。
そして彼に問う。

「お名前を……教えてくれますか…?」

声が震える。
震えがバレないように喉に力を入れた。
彼は優しく笑い口を開いた。
あたしはその唇をただじっと見つめ、出てきた言葉に耳を疑った。








「勅使河原、遥と言います」











そう彼は優しく、美しく、あたしの大好きな笑顔で言った。