引っ越して来た場所は人はあまり居なく、でも都会に近い場所と思われる地域。
なぜならここは大人が住むような場所らしい。
だから昼間は仕事に行っている人が多く、あまりガヤガヤしている所ではない。
あたしが住むことになったアパートは一人暮らしには少し大きい部屋だと不動産屋さんが言っていた。
なんだか少しワクワクするな…。
今まで大学の寮にいたからかな?
一人暮らしが楽しみになってきた。
駅から歩いて十分程度。
外見はオシャレな茶色いレンガのようなデザイン。
「……えっと、103号室…」
あたしは103号室の前に立った。
そして鞄の中から鍵を取り出す。
今、ここで鍵を開けたらあたしの部屋……なんだよね。
胸をときめかせ、あたしは鍵穴に鍵を挿した。
カチャリと響いた。
あたしは鍵を抜き、ドアを開けた。
「……」
新しいような部屋の臭いがあたしの鼻をくすぐる。
玄関には段ボールに入った荷物がわんさかと。
あたしは腕をまくり、段ボールを運び、荷物を方付け始めた。
―――…
「ふぅー…」
半分は片付いた。
なんか、暑いな…。
あたしは汗を拭う。
四月とはいえ、やっぱり動くと暑い。
あたしはベランダに出て、風を浴びる。
「……はあ、きもちー…」
最近切った、肩くらいの髪が揺らぐ。
首元に輝く大切なシルバーのネックレス。
あたしはそれに手を添える。
『またね』
そう言った彼。
頭の中で彼の笑顔が蘇る。
また、どこかで会えるってことなの?
もう一度、出逢えるの?
あたしはあの願い事を書く紙にあたしの願いを全てかいた。
全てといっても一つだけ。
遥と出逢えるなら。
もう一度名前を呼んでもらいたいから。
―――遥を人間にしてください―――
って。
もともと人間じゃなかったような願い事かもしれない。
だけどあたしが書いたことは間違ってないと思うんだ。
記憶の断片じゃなく、本物に逢いたいって。
「あ、そういえば……」
あたしは部屋に戻り鞄の中からピンクいろの小さな紙を取り出した。
それは大事に、大事にしていたあたしの宝物のようなもの。
“おみくじ”だ。