自室に着くとあたしは即座に扇風機を付け、机にある小さな瓶を手に取った。
それを持ち、扇風機の前に座り込む。

瓶の中には小さく折り畳まれたピンク色の紙と白い紙が一つづつ。
ただそれだけ。

「んっ」

あたしは瓶の蓋のコルクを引っ張る。
ポンッという音と共に飛んだ紙。
あたしはその紙を広い集めるとその手は止まった。

「“おみくじ”…?」

そうだ。
これは遥から最期の最終に託された紙。
もう一つは。

「……“願い事を書け”って、どんだけ上から目線なのよ…」

あたしは机の上からペンを取り出した。
そして白い方の紙に何を書くか考える。

「どうしようか…。焼き肉食べ放題?それとも世界一周旅行?うーん……何にしよう…」

あたしが項垂れてると、翔太くんが障子に手を掛けてあたしを見下ろしていた。
溜め息を吐きながら言う。

「…バーベキューやるらしいから手伝えだってよ……だりーよな…」

「わかった。ちょっと先行っててもらえる?」

あたしは紙とペンを手で隠した。

「?、ああ。……何やってんのか?」

「内緒」

あたしは翔太くんにあっかんべーをした。

「なっ、てめぇー…」

「翔太ーー!!手伝いなさーい!!」

すると、どこからか夏希さんの声がした。
翔太くんは舌打ちをしてあたしの部屋を出る前に一言言う。

「肉、食っちまうぞ」

「……肉食が…」

あたしが悔しそうに言うと翔太くんは小さく笑った。
「早く来いよ」と聞こえあたしは微笑む。

やっぱり、遥を覚えているのはあたしだけ。
少し寂しい気もする。
これじゃあ、あたしだけおかしい記憶があるみたいだ。
でも、また遥に出逢えたら二人とも思い出してくれるのかな?
みんなにも紹介したら遥を記憶に記録してくれるのかな?
…………まあ、無理なことだけど。

するとあたしはあることに気がついた。










そうだ。










あたしはペンを持ち慣れた手付きで紙にペン先を滑らせる。
焼き肉食べ放題でもない。
世界一周旅行でもない。

ただ一つ。

あたしの本当の願い事。


「………行こう…」


あたしは紙を小さくたたみ、瓶に入れ、コルクの蓋をした。
おみくじは入れずに二つとも机の上に。

そしてあたしはバーベキューの場所へ向かい、ずっと考えていた決意をみんなに話す。




「みんなに話すことがあります。あたしは―――――」