だから、もう。
ずっと一緒にいれないなんて、遥は言ったんだ。
この透けた手を見れば誰だってわかる。
わかりたくない。
でもわからないといけない。

「………消えちゃうの…?」

震えた声で問い掛けた。
遥は儚い笑顔をして口を開いた。

「うん…その内、ね」

「……っ」

自分で聞いといて悲しくなる。
だけど身体中が熱くなって、爆発したように何かが溢れだした。

「…その内…かっ!!そ、そうだよね……!!遥、今まで断片だけだったもんね!しかないかっ!もう消えちゃうんだもん……もう、二度と会えなく……っ」

途端に溢れた感情と同じようにたくさんの涙が頬を流れる。
胸が苦しい程高鳴ってる。
息が荒くなって、身体の隅から隅までが震えだした。

「美月ちゃん……」

遥は震えるあたしの頭に手を伸ばし、優しく撫でた。
その行動に目を見開くが、すぐ目を細めて涙を拭った。

泣くのは良くない。
遥をもっと不安にさせちゃう。
笑わなきゃ。
笑わなきゃ。
笑わなきゃ、ダメなのに…。

どうして涙は止まらないの?

「…あぁっ…うぇ…うぅぅ」

頭がクラクラするよ。
目が痛いよ。
胸が苦しいよ。

「ごめん…ごめんね…」

どうして遥は謝るの?
謝るのはあたしの方だよ。
ごめんなさい。
いつも泣いてばっかりで。
いつも心配かけて。
いつも傷付かせて。

ごめんなさい。

あたしはいつも貴方を迷惑をかける。
心配させてしまう。
最期にできるなら。
あたしに、何かできるなら。
最期にあたしができることは、何?

あたしは歯を食い縛り、涙を拭った。
そして遥と向き合う。

「遥はあたしにどうして欲しい…?」

「美月ちゃんに…?」

あたしはコクりと頷く。
そして、笑った。

「あたしが……最期に遥にできることは…何?」

「最期に…か」

あたしとは裏腹に、遥は少し苦しそうな表情を浮かべていた。
でも、無理して笑顔を作ろうとしているのが辛いくらい、あたしにもわかった。

「……じゃあ、思い出作り……かな?」

「思い出…?」

「うん」

意外だった。

「だって、美月ちゃんといる時間、増やしたいから…」

そう言って遥は少し離れていたあたしの身体を抱き寄せた。
あたしはゆっくりと遥の背中に腕を回した。

「あたしも……作りた…い…」

崩れるようにしてあたしは遥の胸に身を預けた。
きっと意識がこの空間から遠ざかったんだ。