涙だけが止めどなく溢れ落ちていく。
拭っても、拭っても止まらなかった。
あたしはどうしたらいい？
これじゃあ遥にあんな別れを告げたのは二度目になる。
きっと遥は傷付いている。
謝っても、謝りきれない。
「……はるっ…」
会いたいよ。
会いたいよ。
会いたいよ。
今すぐ抱き締めて。
名前を呼んで。
手を握って。
お願い。
お願い。
「…遥が…好きなの……」
「俺もだよ。美月ちゃん」
反射的に顔を上げた。
身体中に込み上げる何か。
あたしに微笑みかける大好きな人。
「まったく、世話が焼けますね。……君は昔からそうだ」
神様。
「たまには俺の気持ちも考えてね？」
神様。
これは―――
“運命”と信じていいのですか？
「……は…はる…！！」
「顔、酷いですよ？可愛いけど」
遥はしゃがみ込んであたしと視点を合わせる。
そしてあたしの頬を優しく包んだ。
「…美月ちゃん、ごめんなさい。俺、曖昧な事を言ってしまいました」
「え…」
曖昧な事。
『……ごめん、美月ちゃん』
きっとこのこと。
あたしはただ目の前の遥を見つめた。
「…ううん。あたしだって……同じことを二回も言って…」
「別に気にしてません」
「……え？」
「だって、たった今こうやって仲直りしているんですから」
遥は笑っていた。
あたしの大好きな笑顔で。
最近、忘れていた。
この笑顔の暖かさ、頬を包んでいる手の温もり。
ああ。
あたしはこんなにも遥を求めていたんだ。
あたしにとって遥は大事な存在だったんだ。
なくてはならない。
まるでそんな存在。
遥がいて初めてあたしが完成する。
あたしの隣には、遥が必要だったんだ。
「俺はね、美月ちゃん」
「…あっ」
急に抱き寄せられた。
その感触、体温、匂いが夢じゃないと改めて実感する。
そして耳元に甘く、あたしの耳を犯すように囁いた。
「…君が好きだ」
「……う…うぅ…」
ずっと聞きたかった。
ずっと知りたかった。
面と向かって正直に気持ちが聞けた事に忽ち涙が溢れた。
好きな人。
愛しい人と気持ちが通じ会う事はこんなにも幸せな事だったんだ。
きっと忘れていたのかもしれない。
苦しい想いをして初めて結ばれた一本の糸。
それはあたしにとってかけがえのないあたしのたった一つの宝物だ。
