なぜだろう。
夢の中……の、はずなのに。
ちゃんと意識もあるし、身体も自由に動く事ができる。
ふわりと、地上に降り立ったあたし。
不思議なことに、長い髪は寝癖もなく、白いワンピースを身に纏い、足元は裸足だった。
……これは、ここは、本当に夢の中なの…?
目の前に映るのは色がハッキリとした綺麗な神社。
この場所には来たこともないし、知るわけもない。
ここが何神社なのかも、この神社のある地域も。
何もかもが初心者に等しいあたしなのに。
ここを一言で表せば。
懐かしい。
こうなるだろう。
あたしは幻想に近いこの建物を探ることにした。
触ったり、見たり、一通り神社を回った。
恐ろしいことに、触った触感や指先に付着した汚れはハッキリと残っていた。
「……ここは、一体…」
『ねぇ、遥くん!』
…………え?
今どこからか女の子の声が聞こえた。
別にその声に驚いた訳ではない。
あたしの身体は無意識に動きだし、声の元へ駆け出した。
「はぁ…はっ…」
心臓がドクドク動き苦しい。
着いた先は木の陰。
見つめた先は踊り場。
一瞬、涙が溢れそうになった。
胸が苦しくなって唇が震える。
だって、目の前にいたのは。
あたしの大好きな遥がいたから。
それに、隣には女の子がいたから。
胸が張り裂けそうになり、それと同時に怖くなった。
これはあたしのための罰?
嫌がらせ?
これはあれから会っていないあたしに見せる現実?
………いくらなんでもそれは辛すぎるよ。
あたしが悪かったのかな?
あたしが馬鹿だったのかな?
あの時別れを告げなければ。
こんなモノ、見なくて済んだのかな……。
『ちょっと、聞いてる?』
遥の隣にいる赤い生地にお花が散りばめられたような着物を着て長い髪を高い位置で結んだ女の子は遥の黒い着流しを摘まんで言った。
『あ、ごめんなさい。ちょっとぼんやりしていたもんでしたから』
遥はそう言って女の子に微笑みかけた。
『もう…』
『で、どうかしましたか?』
『……あ、あのね…実は…』
この時、あたしは逃げ出していれば良かったのかもしれない。