2月末期。
熱を出したあの日からあたしはちっとも進歩していなかった。
治っては熱を出し、治ってはまた熱を出していた。
ループ現象が起きていたのかもしれない。
結局、遥に会える時間もあまりなく、しかもバレンタインも家で寝てることしかできなかった。
本当に、無念な女だとつくづく思う。

そして最近体調も崩さなくなったなーなんて思っていたらもう2月28日だった。
もう2月も残りわずかだ。
明日から3月に入ろうとしている。
だが、寒さも引こうとはせず、暖かくはならない。
その気温にはうんざりしていた。

それなのにも関わらず、最近、翔太くんはあたしをまるで避けているような行動をとってくる。
理由はわからないが話しかけてみると「放っておいてくれ」とか「またあとで、でいい?」などと、かわされてしまう。


「はあ…」


あたし、何かしたかなあ。
縁側に腰掛けて眩し空を眺めながら溜め息をついた。

熱を出して寝込んでいたからだろうか。
周りの状況が把握しきれていない。
追い付かないんだ。

あたしが項垂れていると達大さんがやってきた。

「美月ちゃん、体調は大丈夫かい?」

「あ、はい。今のところは」

あはは、と笑う達大さん。
相変わらず優しいな。
年齢なんてどうでもよくなる程、爽やかで優しそうな表情でカッコいい。
さらさらな髪もまた、素敵だったりして。

「そう言えば美月ちゃん。遥くんとは順調かな?」

「あっ、えっと……うーん…。なんというか…」

“「正直、進歩ありません」”
なんて、言える訳がない。
恥ずかしいし、みっともないから。
真剣に自分から気持ちを伝えてもいないし、ましてや、遥の気持ちも聞いたことがない。

「まだ…正直言って、わからないことがいっぱいです」

「遥くんの気持ちも?」

「はい…」

我ながら悲しくなってくる。
ああ…、自分が哀れだ。
淀んだ空気を漂わせるあたしに達大さんは笑顔で答えた。

「なら、聞けばいい」

「はい?」

「あれ?聞きたくないの?」

「そ、そう言う訳じゃっ」

「なら、聞けばいい、でしょ?」

あたしは俯きながら頷いた。
異様に頬が熱くなって、隠すのが精一杯だった。

直接聞いてみる、か。

それがどんなに恐ろしいものかは良くわかっている。
だけど、聞きたいと言う気持ちが強いからかな?

なんか、小さな勇気が湧いてきた。