―――「ん……」

ゴクン、ゴクン。
ゆっくり流し込まれた薬。
唇と舌を使って美月の中に薬を流し込んだ。
離した唇を割って出てきた熱い美月の吐息。
その光景に翔太はビクッと身体を張った。
遥は美月の口から溢れたお茶を丁寧に指で掬い取る。

「…翔太くん、ですよね」

「……あぁ」

翔太は唐突な遥の言葉に視線を背けた。
テーブルに頬杖を付き、そっぽを向く。
遥は美月の頭を撫でながら話す。

「…よく、美月は貴方の話を聞かせてくれるんです」

「…っ…」

「怒り半分で話していますが、その内容はいかに楽しげで、聞いていて俺も楽しいんです」

翔太は目を瞑った。

「美月ちゃんも怒っているけど……笑っているんです」

「……」

「話しているときも、笑顔で“翔太くんがねー”って無邪気に話してくれるんです」

「…それはあんたが傍にいるからだろ」

「本当にそう、思っているのですか?」

「……え…」

遥は手を止め、翔太を見つめた。
少しの間二人に沈黙が流れ、翔太は唇を噛んだ。
遥は口を開き、微笑んだ。

「俺は貴方に感謝しています」

「っ…」

「美月ちゃんを楽しませてくれて、笑顔にさせてくれて。貴方にはしきれない程感謝しています」

翔太は綻ぶ遥から視線を反らし、恥ずかしそうに俯いた。

「ありがとう、翔太」

「~~~っ!!」

恥ずかしすぎて何も言えない翔太は袋から色とりどりの和菓子を出してテーブルに置いた。

「これは…?」

「とっ、父さんが和菓子を生産してる会社から、も、貰ってきたやつだ…!!」

遥は優しく微笑んで、「ちょっと待ってて、お皿持ってくるから」と立ち上がりどこかへ行ってしまった。


ぷしゅーー。


翔太の頭から湯気が出た。
顔はタコのように赤かった。

「…んだよ、あいつ…」

恥ずかしかったのか悔しそうに頭をかいた。
そして遥の笑顔を思い出す。

「……あれじゃ、美月も惚れるわけだ……」

小さい声でポツリと呟いた。