「……っ」
頭が、痛い。
水城神社に辿り着いたものの、石段を相手にするとこれはこれは大変。
少しの振動で頭がぐらつき割れるように痛い。
「…はあ」
あたしは少し顔を上げ、重たい瞼を上げる。
あと、少し。
もう、すぐそこなのに。
ガクリと石段に座り込んでしまう。
息が上がってしまう。
ここは冷蔵庫なの?
氷になってしまいそうなくらい寒い。
身体が捩れてクラクラする。
瞼が下がる。
眠たいなあ。
あたしがフラフラ身体を揺らしていると、頭上から聞き慣れた声がした。
「美月ちゃん…!?」
あたしはきっとこれを期待していたのかもしれない。
こうして待ってれば遥は来るって。
少し甘え過ぎだよね。
「…あはは…はーるー…」
「わっ、危ないよ!」
とっさに遥はあたしの元に駆け寄り、抱き留める。
なんだかその暖かさに目が自然と閉じてしまう。
「なにやってんの、美月ちゃんは…、あ、すごい熱」
「あー、うん。らいじょーぶ、らいじょーぶ♪」
「うーん、俺には大丈夫そうに見えないかな。………だけどこんな美月ちゃんもありかも…」
「?」
目を閉じたまま首を傾げる。
頭と腰を優しく撫でる遥の手が心地良い。
もっとって、求めてしまっているように、あたしは遥の胸元にスリスリ寄る。
「はる、あったかあーい」
「あはは、発情期の子猫ちゃんみたいだ♪」
ある意味変態発言を交わす遥はとうとうあたしの異常事態に気を配ったのか、あたしの顔に自分の顔を近づけ、微笑みかけた。
「美月ちゃん、暖かいところに行こうか」
「はーい♪」
「あはは(なんか面白ーい)」
高熱を持つあたしはなぜか上機嫌。
だけど意識がフワフワしているのは確かのこと。
それなのに遥は楽しそうにあたしのことを子猫ちゃんのようにあしらう。
カシャ、カシャ、カシャ。
すると下から袋のすれる音がした。
あたしと遥は反射的に視線を下に持っていくとそこには息を切らして白い息を吐く翔太くんの姿が。
「しょた…くん?」
「あ、この前のお兄さんだ♪」
「…だれがお兄さんだ、ボケ」
翔太くんははめ息を吐くと、石段を登ってきて、あたしと遥の前に来た。
「えっとー…」
「美月を暖かいところに連れていって貰っていいか?」
「……了解しました」
遥は目を細め笑いかける。
その少し色っぽいところに胸が苦しくなった。
それは熱だとしてもわかる。