―――寒さなんて忘れてしまう程、貴方の笑顔はお日様のように温かかった。
「今日も寒いですね」
眩しいくらいの優しげな笑顔にあたしは惑う。
このまま支配されてもいい。
遥とずっといられるならと、あたしの中身は桃色の世界へと一変してしまうのだ。
あたしは迷いなく、水城神社に佇む遥に近寄る。
縮まっていく距離が嬉しい。
だけどまだ近付けない距離が惜しい。
上手く動かない足を恨みそうだ。
すると、遥は自ら行動に出てあたしより先に距離を無くした。
「…ぁ…」
「こうしていれば温かい…」
腰と背筋に回された腕があたしを包み、逃さない。
自然とあたしの腕も遥の背中へと回り、両手の指と指を絡めた。
「美月ちゃんもおバカさんだよね」
「……遥って最近あたしをバカ扱いするよね……」
あたしは聞こえない程度で呟いた。
遥は笑顔で「?」を浮かべながらあたしを見つめていた。
バカバカバカバカって。
あたしを侮辱してるの?
別にたいしてバカでもないのに。
常に成績トップだったこのあたしがバカだなんて……。
あたしは少しだけ腹が立ってしまった。
少しあたしはいじけてしまい、遥の胸に顔を埋めながら口を開いた。
「…あたしは周りにバカだって思われるくらい、遥の事が好きなんだから……本当は超が付く程のおバカさんだよ…」
「…美月ちゃん」
「だけど時には少しだけその気持ちの重さに悲しくなる」
まるで雅也にフラれた時のように、大好きな気持ちを残したまま恋は散る。
「大好きな気持ちを誰かに踏み躙られたり、例えば会えなくなった時とか、好意は自分の中で暴れ出して止まらなくなってしまう」
―――嗚呼。あたしは。
「利用されるだけされたり、裏切られたり、そんなことされたら気持ちはぐちゃぐちゃに掻き乱されて……」
―――あたしは。
「バカなくらい大好きを教えてくれたこの想いを潰して、消し去ってしまうんだ……!!」
―――なぜ、過去を引きずり愛を求めているのだろう。
わからない。
わからないけど。
無性に治まらない感情と込み上げる衝動に―――
―――確実に乱されていた。