1月後半。
次第に寒さは増していた。
衣類も重ねに重ね、家の中でも炬燵から出れない現状。
人は“炬燵にみかん!”と騒いでいるが、あたしにとって炬燵に合うものはズバリ、アイスだと思う。
「太るぞ」
炬燵でアイスを食らうあたしの背後から聞こえた毒。
翔太くんだ。
あたしは反射的に振り返りながら力一杯睨んでやった。
「余計な御世話ですー」
「あっ、てかよりによって俺が好きなカップアイスを…」
翔太くんはあたしの食べ掛けのカップアイス、チョコレート味を見て絶叫した。
だがあたしは迷わずまたそのアイスをスプーンですくい口に運ぶ。
「やっぱり、炬燵にアイスはいいねー♪」
「……」
悔しがる翔太くんを楽しく見ながらアイスを完食した。
そしてあたしは翔太くんを通り越して障子を開ける。
「…またあいつのとこ、行くんか?」
か細い声で呼び止められる。
そんな翔太くんの声に心が悲しくなるけど、今更だと開き直る。
だが少し心に響く。
「うん、行くよ」
あたしが笑顔で言うと翔太くんは恥ずかしそうに笑って頷いてくれた。
板敷きに足を踏み入れた途端背後から「ごめん」と一言が聞こえた。
躊躇わず障子をしめあたしは歩き出す。
何となく背中がくすぐったかった。
正確に言えばソワソワしてあたし自身が戸惑ってた。
あんな顔であんな事を言われたのは久しぶりだったし、もうとっくに吹っ切れたんだと思ってたから。
―――ううん。
あたしは頭を振り、正気を取り戻す。
気付いた時は自室の机に手を置き遥から貰ったぬいぐるみを見ていた。
そうだ。
あたしは―――
玄関に向かって走り出した時にはもう頭は遥でいっぱいだった。
誰もその隙間にも入れない程、窮屈になるくらい遥でいっぱい。
――何もかも消し去ってくれる魔法のように。
それは儚い雪のように淡く。
あたしの中に溶け込む……
あたしは走った。
降りしきる粉雪の中を。
水城神社を目指して。
「こんにちは、美月ちゃん」
今日もまた、遥と二人で。