―――…
「って感じで、朝っぱらから大変だったよ」
「お疲れ様」
あたしはあれから昼食を食べ、水城神社に来た。
いつものように縁側に二人、手を繋ぎ寄り添いながら。
「ねぇ、美月ちゃん」
「なに?」
振り向いた瞬間、被さる遥の顔。
柔らかくて綺麗な遥の前髪がくすぐったかった。
唇には表せない程の熱が伝わる。
「……っ」
そして遥の舌があたしの中を撫でる。
綺麗に拭き取るように。
「甘い…」
離れた唇から銀色の糸が延びる。
あたしはすかさず手で口を押さえた。
きっと顔は赤いだろう。
遥はフッと笑いあたしの頭を優しく撫でる。
「御汁粉食べたんだね」
「…お、御雑煮も…食べたもん」
「おや?なら、御汁粉の方が後に食べたよね」
「……ぅん」
恥ずかしかった。
口付けをして「甘い」などと言われ、終いには昼食の食べた順番まで当てられてしまうことに。
遥はまるで兄のように妹のあたしをよしよし撫でる。
あたしはあまりの悔しさと恥ずかしさに支配され思わぬ事を口にした。
「あたしっ、遥の特別な人になりたい………っ!!!」
我ながら恥ずかしいセリフだった。
遥は少しビックリした様子だったが、はにかんだ顔をしてあたしを抱き締め、顔をあたしの肩に埋めた。
「…もう、バカだなぁ」
肩がじわりと熱くなる。
鼓動は加速し止まることを知らない。
風で少し揺らぐ遥の髪が愛おしい。
遥はあたしの耳元で囁いた。
「“アレ”をした仲でしょう?」
「…ひゃっ…!!!???」
噴火した。
顔がジンジンする程熱くなり、クリスマスの夜起こった出来事が頭の中で回想される。
あたしは更に恥ずかしくなり、遥をぎゅっと抱き締めた。
「は、恥ずかしいこと…言わないでよバカっ…」
「恥らせる事が愉快なだけですよ」
「………変態…」
あたしは遥の胸に顔を埋めた。
とても温かくて、暖かくて。
心地好い鼓動も打っていて。
大好きな匂いがした。
「………だぃすき…」
「ん?なんか言いました?」
「なんでもないっ…!!」
遥がこの時顔を赤らめていたことなんかあたしには知らない。
熱くてクラクラするあたしたちに、冬の冷たくて刺すような風が吹いても、温もりに変わるんだ。
遥があたしの傍に、いる限り。