「…んっ」


目覚めは、最悪だった。
身体中が痛くて、まるで筋肉痛のようだった。
起き上がろうとするがその痛さに完敗し、再び枕に頭を落とす。

するとその光景を見ていたのか、遥が愉しそうに笑っていた。


「浴衣、乱れてますよ」

「え?っうわ!!」


あたしは急いでお布団の中に潜り込む、が。


「…いったああぁあい!!」


身体に電気が走った。






―――…



しばらくすると、あたしたちは朝食にした。
素晴らしい事に、遥は料理が得意だったらしい。
神の手のように味付け、温度調整、すべてを正確にこなし美味しい朝食を作り、食べたのだ。

「…なんか、意外だね」

「どうして?」

「遥、料理上手なんだなって」

あたしは「女の子にモテちゃうね」なんて軽く遥に言った。
だけど遥は不満だったのだろうか。
箸を止めてあたしを睨む。


「…俺は美月ちゃんだけにモテればそれでいいんだよ?」

「……ゴックンッ!!??」


あたしは口の中に含んでいた物を良く噛まないで飲み込んでしまった。
口をパクパクして遥を見た。
きっと今のあたしは信じられない程顔が真っ赤に違いない。
遥は優しく笑っていた。


「ばか…」


あたしは遥に言ってやった。

朝食を食べ終え、あたしは流しに食器を持っていった。
食器を洗おうと腕を捲るが遥がそれを制する。

「美月ちゃんは着替えておいで。寝ていたところにあるタンスの上から二番目の引き出しの中にある服自由に着ていいから」

「え…でも」

「大丈夫、任せて?」

口に綺麗な弧を描く遥に逆らえず、あたしは頷き寝室に向かった。

寝室に行くと布団が敷きっぱなしだった。

「遥ばっかじゃいくらなんでも不平等だよねっ」

毎朝やっている布団畳みは十分に自信があった。
誰だってできるが。
あたしは布団を素早く畳み、遥の言われた通りタンスの上から二番目の引き出しを開けた。


「わ…」


びっくりだった。
服を出したりしてみる。
色とりどりの女性用の服がぎっしり。
レースの付いたものや、花柄、ボーダー、水玉模様まで。

「…なんて趣味」

あたしは遥の趣味にびっくりだった。
それと同時に不安も生まれる。
遥は誰か女性と付き合ったり、家に居させたりしてたのかな、と。