「……お疲れ様、美月ちゃん…」
青年は美月という名の少女の頬を撫でた。
月明かりと雪の光に照らされた白い滑らかな肌に指を器用に這わせていく。
そして青年は少女の頬に当てた自身の手を見つめた。
透明と化した、哀れな手を。
「…時間は、恐ろしいものだね…」
―――俺の身体も
崩れていく。
青年は心の中に“悲しみ”を生み出す。
目の前の彼女を見て更に酷く、自分が弱くなった事を我ながら呆れる。
『…だけど近くにいる温もりを手離さないように捕まえるんだ』
少女が言った言葉が脳内を駆け巡る。
そのか弱さと、潔さが自分の心にしがみつく。
切なくてどこか力強い。
離さない。
捕まえる。
―――俺は
美月ちゃんのように
強くはないから。
透明化している手のひらを恨めしく思った。
―――運命は
滑稽で
残酷だ。