「電気消すよ?」

「はーい」

パチ。
電気が消された。
あたしたちはフカフカのお布団を敷いて今から寝ようとしていた。

「…おやすみ、美月ちゃん」

「おやすみ…」

あたしはソッと目を閉じる。
だけどうっすら目を開けて、遥を見た。

「……」

隣には遥がいる。
こんなに近くに遥がいる。
布団の中だからとかじゃない。
あたしの心に染みる紛れもない温もりはきっと遥の存在そのもの。


あたしは天井を向き、顔をしかめた。


温かさがあれば、少し冷たさもある。
離れてしまいそうと感じてしまう事が。
本当に夢に出てきたのが遥ならばあたしの心はより一層悲しみを増すに違いない。


でもきっと、大丈夫。


夢は夢。
ここは現実なのだから。



「……っ」


ふと感じた手のひらの小さな温もり。
あたしは遥の方を向く。
遥は少し悲しげな表情をして、天井を見ていた。


「…朦朧としているのかい?」

「……うん」


遥の問いに小さく頷く。


「……なんだかね、夢が現実を喰らおうとしてるの…―――」


ただ曖昧な。


「夢と現実の狭間がごちゃ混ぜになって―――」


近くに在る者さえ幻に見えて。


「思考が上手く回らないんだ…」

「…そっか」


遥の声はか細かった。
あたしが息を飲む程に。
繋いだ手をあたしは力強く握り締める。
そしてあたしは少し辛い笑顔を作る。

「…だけど近くにいる温もりを手離さないように捕まえるんだ」

「美月ちゃんらしいね」

遥は笑っていた。
良かったと安堵をする。
遥はあたしの方を向き、手の握り方を変える。
指と指を絡め合うような。

「…美月ちゃんの手、小さいけれど温かいんだね」

「遥も十分温かいよ」

「……もっと温かさを感じられる方法もあるよ」

遥は怪しげな笑みを浮かべた。
あたしは笑みを浮かべ目を細めた。

「……今なら、できそうな気がする」


そう言ってあたしは遥の胸の中に入り込み、遥を見上げた。
遥は優しく笑いあたしを撫でた。


「待ちくたびれたよ……」



そして遥はあたしに口付けをした。




聖なる夜に、あたしたちはひとつになった。
あたしという糸と、遥という糸が絡みに絡んでひとつの糸のように結ばれていく。







――――どうか、神様。

この糸を決して離れない

一本の糸にしてください…。





あたしは願った。