雪が舞い散る。
ちらほらと。
確かに冷たく。
遥の温もりで冷えきったあたしが徐々に溶けていく。
今までの辛さと悲しさを溶かしていくのだ。
「…美月ちゃんは辛かった?」
「うん…」
「…苦しかった?」
「うん…」
優しい遥の言葉が降ってくる。
あたしはその度に頷く。
「…婚約者さんは許してくれたの?」
あたしはぬくっと遥の胸から顔を離し、遥を見つめた。
「…うん、泣いてた」
「泣いてた…?」
「…大事な人が幸せになることを望みたいって…言ってた」
あたしは遥から離れシルバーの袋を出す。
遥の手を取り、プレゼント渡した。
「…メリークリスマス」
「……ぁ…」
遥は照れくさそうにプレゼントを受け取る。
俯きながら中身を開けてブレスレットを出した。
キラキラ光って、まるで雪のよう。
「…バカ、ですね」
「え、バ、バカ!?」
「バカですよ…本当に…」
顔を上げた遥はまるで不器用な恋をしている少年のように頬を赤らめていた。
一瞬、考えてしまった。
あたしと遥が引き離されたあの日、神様はあたしたちを味方してくれなかった。
だけど今はどうだろう。
またこうして言葉を交わし、触れ合える。
「美月ちゃん…?」
もう怖くないって。
大丈夫だって。
「なんでもないよ」
笑っていられるって。
遥をただ想い続けられるって。
「美月ちゃん…」
「…ん」
唇を重ねても揺るがないこの想いだって。
全部、全部、全部。
自分に自信が持てない。
なぜだかはよくわからない。
だけど、思考と気持ちの狭間で何かがざわめいてこれは夢幻じゃないかって不安になってしまう。
せっかく逢えたのに、自分が臆病になるのが怖い。
「美月ちゃん…」
「……」
名前を呼ばれる度、さ迷う。
「どうして泣いているの…?」
ただあたしは、居場所と存在理由が欲しかっただけ。
「…ごめん…なさい…」
あたしは無力な人間なのだろうか。