「…もう、無理して笑うな」

「…え…」

翔太くんはあたしに優しく説教をし始める。
頭を軽く撫でながら。

「…もう、我慢しなくていい」

「翔太くん…?」



抱き締めた腕が緩まり、翔太くんの顔が見えた。


「……っ」


逆光だけど確かにわかる。


ストン。


プレゼントが入った緑の袋が床に落ちた。

翔太くんの涙に心を打たれ。


「…しょ―――」

「俺は子供だった。あの時も…そして今でも」

翔太くんはあたしから腕を離し一定の距離を保ちながら続ける。

「自分の大事な人が誰かを想っていることに嫌気がさして、終いには閉じ込めて自由を奪った」

「……」

「だけど、間違ってた。これは自分の勝手な危機感に相手を巻き込んでしまっただけ。もっと単純に正面からぶつかって愛していれば良かったのかもしれない。でも―――」


翔太くんは軽く瞬きをした。
その間からは大粒の雫がポロリと落ちた。


「…もう愛したって無駄だとわかった今、俺は大事な人が幸せになることを望みたいって、思ったんだ」

「…しょ…た…くん」


あたしの視界が歪んだ。
ぼやけて先が見えない。
何が起こっているのかも、わからない。
だけど一つだけわかるとしたら。





今、あたしは泣いていること。






「…美月、大好きだったよ」





涙が溢れた。






そして、悔しかった。

自分より翔太くんの方が大人だったこと。
自分より翔太くんが輝いていたこと。


自分が翔太くんに涙を流させられたこと。






翔太くんはパーカーのポケットからシルバーの袋を出した。


「それは…っ」


あたしが今まで探して来た遥へのプレゼント。
翔太くんは笑顔であたしに渡した。





「…行ってこい。クリスマスイヴが終わっちまう前に」

「……っ…」


あたしは涙を拭い取り翔太くんからプレゼントを受け取り吹っ切れた気持ちで言った。


「行ってきます」


あたしは走って遥のいる、水城神社に向かった。











翔太くん、ありがとう。





心の中で呟きながら。