障子の向こうから騒がしい声がした。
何だろうと思いあたしは部屋を出て声がする部屋へと向かった。
この時プレゼントを出しっぱなしにしていた事なんか忘れていた。
向かった先は玄関だった。
お母さんと夏希さんが何やらヒラヒラキラキラの服を着てお互いに誉めあっていた。
「…何、してんの」
「あ、美月ー!」
お母さんが楽しそうに寄ってきた。
あたしは「どこ行くの?」と聞くと夏希さんが笑顔で答えた。
「今夜、地域でクリスマスパーティーがあるのよー」
「クリスマス、パーティー?」
あたしが聞き返すとお母さんと夏希さんは頷いた。
ならあたしも行くのかな、と思ってみたら夏希さんが顔を赤らめて微笑んだ。
「美月ちゃんと翔太はお留守番よ」
「………はい?」
一瞬時が止まったように感じてしまった。
「…あたしと翔太くん…二人でお留守番?」
「イチャイチャしちゃってね♪」
「…」
夏希さんは、何が言いたいのだ。
あたしは呆然と口を開けていることしかできなかった。
「美月ちゃん!!」
「は、はい!」
いきなり夏希さんに手を握られた。
「ゆっくりでいいのよ!」
「?」
「焦らずゆーっくり。ね!?」
「あ、あのー…」
あたしが戸惑っていた時、後ろから足音が聞こえた。
あたしは直ぐ誰かとわかった。
「母さん変態」
「あら、翔太」
夏希さんはパッと手を離し、ニコニコ笑って翔太くんに視線を向ける。
「翔太、早まっちゃダメよ」
「…バカかよ」
「いい?美月ちゃんの身体を第一に考えるのよ」
「………変態」
すると翔太くんはあたしの手を引きその場を離れていった。
後ろから夏希さんの元気な声が聞こえる。
「朝っぱらからはダメよー!」
「……っせーな…」
翔太くんはボソッと呟いた。
後ろから見た翔太くん。
背中が大きくて、何となく男の子の匂いがして。
ほんのり耳が赤くて……って。
「えっ!?」
「な、なんだよ」
振り向いた翔太くんの顔はまるでタコが連想されるように赤く染まっていた。
「…顔真っ赤」
「う、うるせっ!!」
そういって翔太くんはあたしを縁側から庭に積もる雪に目掛けて投げ倒した。